2001年3月23日
厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課御中
「保育所入所定員の弾力化等について(案)」に対する意見
全国福祉保育労働組合児童関連種別協議会保育部会
部会長 福田 ひとみ
(1)屋外遊戯場の設置について
@子どもの育ちが困難になってきており、子どもの身体も心もつくりにくくなってきています。このような社会情勢のもとでは、子どもの発達と成長を保障できる生活空間の整備は必要不可欠です。安心して走りまわれる空間と日常生活を行う空間が隣接していることは重要な意味を持っています。
A犬猫の糞尿や路上生活者(ホームレス)の問題、遊具の整備など安全面・衛生面など、多岐に渡り公衆の公園や寺社境内と保育所の園庭では明らかな違いがあります。また、現行の職員配置基準では慢性的に人手が足りず、周辺の道路事情など簡単に屋外に散歩することもできません。
B土地の確保が困難な都市部で保育所の整備が容易にはなると思いますが、原則として園庭を整備する必要があると思います。また、やむをえず屋外遊戯場を設置する場合でも、子どもの安全を保障できる職員配置の義務づけを前提とすべきです。
(2)乳児室・ほふく室の面積について
@現在の最低基準は制定以来見直しされていない古い基準であり、子どもたちのいのちを守り、充分な成長・発達を保障できる広さを持った基準ではありません。また、定員の弾力化等、各地では自治体自らが、廊下や玄関ポーチ、プレイルームなど本来、保育室ではないスペースを保育室とみなし、弾力化・すし詰め保育を強制している実態があります。
A定員の弾力化から、現在でも廊下等で午睡をせざるを得ない現状が出ているのが実態であり、面積基準の緩和は子どもたちの健やかに発達する権利を脅かすものです。
B日本の住環境の悪さから、充分なはいはいができないまま立ち上がる子どもなど、発達の順序・課程を践むことができず、発達の遅れが目立つようになってきています。0歳児・1歳児の子どもたちは身体の発達が著しい時期であり、充分な成長・発達を保障する面積として、5uは最低限必要な広さです。その基準を緩和することは子ども本位を見失っている施策といわざるを得ません。
(3)保育所入所定員の弾力化について
@現在、詰め込み保育・すし詰め保育は前項各地で大きな問題になっています。それをさらにすすめる年度途中での125%枠の撤廃は、子どもたちの健やかに発達する権利を脅かすものです。
A子どもも大人も1年中出入りする定員の弾力化は、子どもたちにとっても安定した集団をつくりにくい要因となっています。また、保育の積み重ね、集団的な保育を作り上げていく上での職員集団づくりにも大きな弊害となっています。
B厚生労働省も「定員の弾力化は緊急避難措置」と位置づけています。待機児童対策として緊急に行うべきは定員の弾力化が恒久的につづく危険性のある弾力化の125%枠の撤廃ではなく、公立保育所や社会福祉法人立の公的責任の明確にされた保育所の増設により行われるべきです。
(4)短時間保育士の配置について
@福祉・保育労働は人の人とのコミュニケーションによって成り立つ労働であり、職員の賃金・労働条件の低下は利用者への処遇(サービス)の質の低下に直接つながります。福祉労働者はスペシャリスト(知識的専門家)ではなく、エキスパート(技術熟練者)であり、継続して働き続けることにより専門性を高めていくことができます。
A各組(グループ)に常勤保育士1人以上の配置要件は維持するとしていますが、開所時間が長時間化する現状では、正職のいない時間帯が発生する危険があります。また、短時間保育士の増大で正規職員の責任を重くし、心身両面での労働強化につながる結果となります。昨年、私たち全国福祉保育労働組合保育部会で行ったアンケート調査では、全職員数にしめる非常勤職員の割合は、全国平均で35.9%となっています。「責任をもたさない」ことで正規職員と非常勤職員の業務内容の差を付けようとするため、「正規職員の事務量や責任の比重が多くなる(静岡)」のように、正規職員へは今まで以上に事務量や負担が増え、非常勤職員は「責任ある仕事ができない(やりがいを感じれない)」ことで職場に矛盾がでてくる結果になっています。
Bまた、「子ども達の様子を伝え合うことが難しい。(新潟)」「お互いに遠慮することで一体感が薄れてくる(東京)」「保育内容について各クラス(年齢)の積み重ねができない。(東京)」「保育内容についての話し合いが不十分(高知)」「正規職員のみの保育会議や職員会議を持つため、クラスでの保育内容の計画や職務上の伝達がうまくいかず、非常勤職員から不満が出ている。(大阪)」「仕事内容について1つ1つ細かく教えていかなければならない。(大阪)」など、保育時間の長時間化と職員の勤務体制の複雑化、短時間保育士の増加(雇用の不安定化)によって、経験や集団的な積み重ねによる保育の一貫性が困難になってきており、日常の保育に弊害も出てきています。
C健全な育ちの保障や子育て不安への対応など、今日的な課題に取り組むためには、専門性の追求とゆとりある保育条件が必要不可欠です。しかし制度改悪等によって現場の体制は非常に厳しいものになっています。
D現在の社会情勢・社会不安からおきる子どもの育ちの問題、保護者の育児不安など、保育労働者には今まで以上に高度な専門性が求められています。いま、行われるべきは、最低基準内の保育士の完全正規職員化であり、2割規定の撤廃による非常勤化の促進ではありません。
(5)公立保育所の業務を委託する場合について
@公立保育所はその地域(自治体)の保育所の規範、基準としての位置づけももっています。その基準を投げ出す民間委託を促進する内容には大きな問題があります。
A東京三鷹市で公設公営保育所の委託先がベネッセコーポレーションに決まりました。委託費用が安いことが理由の1つに挙げられていましたが、保育所をはじめとする福祉施設は、支出の大半(8割以上)を人件費が占めています。コストが安いということは人件費が低く抑えられていることに他ありません。職員への賃金抑制・労働強化は子どもたちの健やかに発達する権利を脅かすものです。
「保育所入所定員の弾力化等について(案)」に対する意見
全国福祉保育労働組合東京地方本部保育協議会
はじめに
昨年3月末に国は、保育所への企業参入を認める通知をしました。その後、東京都は全国に先駆けて東京都の保育所に企業参入を認め、設置基準を国基準に引き下げました。
その後11月には、都独自の施策として国基準よりも低い「認証保育所制度」を発表しました。国の一本の通知を発端に、東京都の保育が猛烈な速度で切り崩されています。
様々な規制緩和が保育労働者を苦しめ、結果として子どもたちに影響を与えています。
私たちは、公的責任を後退させていく国や都の施策に、大きな危惧を抱いています。
子育て不安や子どもの育ち等が社会的問題になっている今、保育所の役割はますます重要になっています。公的責任に基づく保育所を守り、さらに充実させていく立場で意見を述べます。
1、屋外遊戯場の設置について
基本的には、一つ一つの保育所に屋外遊戯場が設置されることが必要であり、その為に公的補助があるべきと考えます。しかし、東京都は実際には充分でない現状があり、幼児だけでなく乳児も毎日のように公園等に行って遊ぶのが普通になっています。
その為、移動時や遊んでいる最中も子どもたちの安全に充分な配慮が必要です。
屋外遊戯場を設ける補助をせず、「隣接する必要はない」とするならば、安全に戸外活動ができるよう、人員増をのぞみます。
2、乳児室及びほふく室の面積について
これまで東京都の保育所の設置基準では乳児室一人5uであり、今回認可基準が引き下がる以前に認可を受けた保育所は、その基準で保育されています。しかし、一人5uでも充分な面積とはいえない現状があります。0歳児クラスは最大の月齢差を考えると、産休明けの月齢から満1歳11ヶ月までの差があります。一人一人の子どもたちの生活リズムを保障しながら、睡眠、食事、あそび、運動発達を保障していくために、保育士は一日の保育の流れを細かく組み立て、子どもたちにゆったりと接する配慮をしながらも、素早く保育室を整えたり、乳児も戸外に出たり最大限の努力、工夫をしています。
そしてそのことが保育士への労働強化につながっているのが現状です。
一人5uは最低必要な基準であり、改善されていくべき課題と考えます。待機児の受け入れを理由に、緩和していくことに強く反対します。
3、保育所入所定員の弾力化について
定員の弾力化について、以前厚生省は「緊急避難的措置として位置づけている」との見解を示しています。定員の弾力化による「すし詰め保育」の問題については新聞報道され、保護者からも不安の声があがっています。最低基準は、制定されて以来、一度も見直しもされてはおらず、改善が迫られている基準です。しかし、保育室以外の廊下等も保育室とみなし、弾力運用をすすめているのが現状です。そのような中で125%の枠を外し、さらに弾力運用をすすめることは、子どもたちの成長の保障をおびやかすものです。これ以上「詰め込む」ことは、不可能です。
以前の厚生省の見解通り、定員の弾力運用は「緊急避難的措置」です。待機児の解消は公的責任で行ない、公立保育所や社会福祉法人立の保育所を早急に増設してください。
長時間保育が一般的になっている今、子どもたちがゆったりと保育園で過ごし、保護者も安心して預けられるよう、更なる定員の弾力化運用には反対です。
4、短時間勤務保育士の配置について
保育所では0歳から6歳までの乳幼児が過ごします。この年齢は、一人一人の子どもたちが自分らしく人間としての基礎の部分を築いていく時期であり、まわりの大人は重要な役割を担います。保育に携わっている私たちには、一人一人の子どもたちを見つめ、心に寄り添いながら必要な援助をしていくことが求められています。また、保護者は子育て不安が強かったり、育児についての知識が少なかったり、自分の子どもが理解できずに悩んでいたりしており、子どもと同様に保護者にも寄り添い適切な援助が必要とされています。
現在の子ども、親の状況から考えれば、これまで以上に専門性を駆使したきめ細かな対応が求められています。しかし児童福祉法「改正」後、保育士定員の2割までの短時間保育士が導入され、それに加えて不安定な補助金で新規事業を行なうことによって、期間雇用職員やパート職員の割合が増大しています。つまり、保育所の中には様々な雇用形態の職員が混在しているのが現状です。このような状況は、子どもたちや保護者にも影響しています。子どもからみれば、時間帯によりパート職員が替わり、1日に接する大人の人数が多くなり落ち着かなくなったり、保護者からみれば、正規職員がとても複雑で厳しいローテーション勤務を行なっている為、朝・夕の時間、担任とゆっくり話ができにくいという状況がうまれています。
しかし職員はきちんと受け止めて対応していくことを余儀なくされ、勤務時間外に対応したり労働強化にもつながっています。さらにパート職員、短時間保育士に伝達することが多くなり、これも日々の労働の困難さを増大させています。今、保育所では質的な労働の大変さとともに、地域での子育て支援事業を行なったりと、量的にも仕事が増え、大変さを増しています。
このような中での私たちの要望は正規職員の増配置です。さらに現在配置されている栄養士や看護婦の他に、心理職の配置も望まれています。子どもたち、保護者の現状から考えて、必要とされる施策と逆行し、「2割の枠」をなくし、各組(グループ)に一人の職員がいればいいという緩和は、絶対に許せません。職員の増配置などの施策を強く望みます。
5、公立保育所の業務を委託する場合について
東京都三鷹市の公立保育所の委託先がベネッセコーポレーションに決定した最大の理由に「安いコスト」が挙げられました。コストを安く抑えるということは、保育所運営費の大半を占めている人件費を抑えることにつながります。職員の労働条件、賃金がどのようであるかが、子どもたちの処遇に影響すると考えます。「安いコスト」で運営される保育所は、子どもたちの権利が保障されなくなることにつながります。
公立保育所は、その地域の保育水準であり、宝です。基準を下げ、民間委託をしていくことには反対します。
最後に、未来を担う子どもたちが真に大切にされる保育施策を切望します。