《談話》
公的福祉制度を破壊する「社会福祉事業法等8法改悪」は認められない
全国福祉保育労働組合
中央執行委員長 水野 洋次郎
(1) 今回の社会福祉事業法など関係8法「改正」法案は、国民の生存権保障を記した憲法25条を体現したこれまでの社会福祉制度を根本から改悪する重大なものである。
周知のように、わが国の社会福祉事業は戦後から今日にいたるまで社会福祉措置制度によって、国民の生存権を守るために国と自治体の公的責任による非営利の事業として展開されてきた。ところで、これまで厚生省は社会福祉措置制度について給付内容やその水準を行政が一方的に決めることができるという「職権主義」の立場にたち、保護を求めたり給付内容や給付水準の向上を求める国民の権利性を全面的に否定してきた。
以上の点で、21世紀にむけての社会福祉制度の拡充を考えていく場合、政府・厚生省のこれまでの「職権主義」の立場こそを問題にすべきである。今回、改正をすすめるにあたって重要なことはこれまでの社会福祉措置制度そのものを否定するのではなく、国民の権利性を認めて国と自治体の公的責任を発揮する方向で社会福祉措置制度をいっそう拡充することこそ求められるべきである。
今回の法「改正」案はそのような方向には立っておらず、社会福祉措置制度を解体し国と自治体の公的責任を曖昧するというまったく逆の大改悪の方向が示されていることを、まずは指摘しなければならない。
(2) 今回の「改正」法案が課題にしている「国民の選択権」「利用者の権利擁護」「情報開示」等は、これまでの社会福祉事業のあり方をみるなら早急に改善しなければならない重要な課題である。
ところで、これらの課題の克服を考えた場合、国や自治体が社会福祉事業から撤収して公的責任をないがしろにする一方、民間事業者と利用者・国民との契約関係による福祉サービスの提供で果たしてこれらの課題が克服できるのであろうか。
今回の「改正」案では、政府は行政の公的責任は制度の枠をつくることであって、社会福祉事業サービスを提供するのは民間事業者であればよいという。また、その民間事業者は非営利法人や組織だけでなく、営利企業の社会福祉事業への参入を積極的に認めている。このような方向は、端的にいえば公的福祉制度を解体し社会福祉事業そのものを民営化する以外の何ものでもない。
国民の生命と生活をまもる社会福祉事業を営利事業化して、はたして「国民の選択権」や「利用者の権利擁護」等が本当に守られるのであろうか。今回の「改正」案では「国民の選択権」がとりわけ強調されているがこれまでの社会福祉事業の状況をみるなら、社会福祉事業の営利化は二重の意味で「国民の選択権」を奪い国民が選択されざるを得ない危険をはらんでいる。
第1に、国民が選択できるほどに社会福祉事業の基盤が整備されていないことである。とりわけ、今回の「改正」の中心柱となっている障害者福祉の施策は社会福祉事業の中でも最も遅れた分野であり、「国民の選択権」を行使できる状況にはまったくといってよいほど基盤整備が遅れている点である。
第2に、すでに厚生省は「改正」法案の成立を前提に『社会福祉法人会計基準』を通知しているが、そこでは利用者の自己負担金の徴収不能を見越して「徴収不能引当金」の勘定科目を設定している。これまで利用者の徴収不能は公的福祉制度の中で解消されてきたが、今回の「改正」案では個々の事業者にもちこまれることになっている。そうであれば利用者と事業提供者が契約を直接結ぶ場合、事業者が徴収不能の利用者を契約を結ぶにあたって「選択」することも生ずることを危惧しないわけにはいかない。
(3) 今回の「改正」案では、“適正な競争原理による利用者サービスの向上”がうたい文句の一つとなっている。しかし、競争原理の発揮が本当に利用者サービスの向上に結びつくのであろうか。事業者間の競争によって、現象的には様々な福祉サービスが登場するであろうがその根源が営利性にあるかぎり、事業者間同士やそこにはたらく職員、あるいは利用者に種々の形で矛盾やしわよせが生ずることであろう。
社会福祉事業は国民の生命と生活をまもる重要な事業であり、憲法25条の国民の生存権の一端を担う事業である。そのような事業に営利性や効率性を求めること自体が、そもそも問題である。
いま国民が求めていることは「公共事業50兆円、社会保障29兆円」の逆立ち予算をあらため、国と自治体の公的責任を基礎にしたいっそうの社会福祉事業の拡充である。21世紀にむけて、真に国民の権利としての社会福祉事業のいっそうの発展を今こそ求めるのものである。