同時多発テロとそれへの軍事報復によって多くの人命が失われ、「戦争はしない」と誓った国を、再び「戦争する国」へと引きずり込む参戦法が強行されました。
そして、「大砲とバターは一致しない」という古くからの格言が示すように、戦争政策の拡大と裏腹に健康保険制度の本人3割負担への改悪をはじめ、社会福祉の公的責任の切捨てと営利企業への投売り、国民への負担強化が怒涛のように押し寄せています。
また、小泉「改革」に伴う「激痛」は、働く者の労働と生活、営業を直撃し、大企業による徹底したリストラ『合理化』と中小、零細企業の営業不振、倒産が相次ぎ、直近の統計では完全失業率は5.3%に達し、失業者数は350万人におよんでいます。
さらに、賃金水準が低下しつづけていることも重大です。来春闘に向けて電気・鉄鋼関係の労働組合(電機連合や鉄鋼労連)は、早々と「ベア要求を断念」することを決めました。公務員賃金も、2001年人勧による一時金カットによって、2年連続で年間賃金総額が減少しています。
まさに、いよいよ深い不況・倒産・失業・賃下げ・生活破壊、そして平和の危機という四重苦、五重苦が日本全体を覆いつくそうとしているのです。
(1)ある保育労働者の「私は、この仕事が大好き、やりがいや誇りを感じる。しかしベースアップも定期昇給もなく、ボーナスもカットされた。これでは自分や家族の生活をいつまで支えられるか不安」(保育士-「1万人レポート」)という声に象徴されるように、私たち福祉労働者の生活と仕事、雇用問題も深刻で、重大です。
2001年春闘での「要求アンケート」の集約結果では、「昨年より年間所得が減った」との回答が約40%、「生活が苦しい・やや苦しい」との回答が7割近くにのぼりました。さらに、「雇用不安がある」と答えた人が40%、慢性的なサービス残業に象徴される長時間過密労働の下で「健康不安」を訴える回答は80%にも及んでいます。
昨年実施した「賃金実態調査」によると、全体平均は20歳で約16万円、40歳で25万円強という水準ですが、地方によっては40歳で210,900円(山形)とか213,150円(島根)という信じられない低賃金実態も残されています。これらは、人事院標準生計費(5人世帯で293,180円)をもはるかに下回るという水準です。
民間福祉労働者の全国的な平均勤続年数が7年にも満たないという主要な要因のひとつがこうした賃金実態にあることは明らかです。そして、これらの低賃金実態をこれ以上放置しておいては、「利用者の権利と発達保障にとって不可欠の要素である福祉労働者の経験の蓄積と熟練」(『福祉ウェーブ運動』方針)を実現し、増大し多様化する国民の福祉要求に応えることはできないでしょう。
(2)欠陥だらけの介護保険制度のもとでの高齢者福祉職場の状況はどうでしょう。多くの職場では、引き続くケアマネジャーの苛酷な労働強化をはじめ、収入の不安定化に見合った能力・成績給導入等の賃金制度の改悪、職員増を伴わない事業拡大、「空きベッド」の稼動率引き上げのための頻繁な居室移動、サービス毎の利用者確保のための「営業活動」、「コストダウン」のための職員の非常勤化や給食等の外部委託など苛酷な「経営合理化」が進行し、労働者からゆとりと仕事の喜びを奪っています。昨年6月に高齢者種別協議会が行なった「介護支援専門員(ケアマネジャー)実態調査」の中で、40人の回答者全員が「労働内容に不満」を訴え、2割が「辞めたい」と答えていることにも象徴的に示されています。
また、ホームヘルパーの賃金や身分保障、労働条件、仕事内容の問題も切実です。福岡県社協が行なった社協ヘルパー(常勤)への意見聴取では、「とにかく時間で働く。休み時間やトイレ休憩さえも取れない」、「事務作業が多すぎる」など、多くの不満が訴えられています。
さらに、厚労省が2002年度予算への概算要求の中で示した「新型特養ホーム」(個室主体の特養)の利用においては、規定の介護保険利用料に加えて個室利用に伴う家賃・食費・光熱費を含む居住費(ホテルコスト)を徴集するという方針を明らかにしています。こうした「受益者負担」強化の方向は、所得の多寡に拘わらず、すべての高齢者に「平等な権利」と「健康で文化的な生活」を保障すべき社会福祉サービスの理念を大きく歪めることにつながります。
(3)障害者福祉の職場でも、2003年度から利用契約制度と支援費支給方式の導入を前に経営や事業、労働体制の「見直し」が進められています。
多くの職場で、グループホームやショートスティ、デイサービス事業等の新規事業の開設がすすめられ、それに伴う宿直(実態は夜勤)体制の導入、非常勤職員の増大など労働体制と労働条件の変更が広がっています。また、介護保険と同様の出来高払い制度である「支援費」方式に対応するために成績給導入を含む賃金制度の改悪検討も進んでいます。
福祉保育労障害種別協議会が傘下の障害者関係の職場を対象に緊急に行なった「障害現場の労働者自身が感じている(支援費制度への)不安や疑問」についてのアンケートでも様々な問題が渦巻いていることがわかります。その中でも、自治体からの補助金の削減や今後の経営の不安定化、サービス量の絶対的な不足の中で利用できない人も出てくるのではないか、等の強い懸念が表明されています。
(4)保育職場はどうでしょうか。企業参入や定員弾力化、非常勤職員数の事実上の上限撤廃などの「規制緩和」と「多様な保育ニーズへの対応」、「子育て支援」、「利用しやすい保育所」等の掛け声による競合的な事業拡大のもとで保育労働者は、疲労困憊しています。全国一の職員配置であった東京でも、正規職員が減らされる一方で子育て支援などの事業拡大が「競争」をテコに強行されるもとで、組合が行ったアンケート調査では「仕事がきつくなった」、「ややきつくなった」が75%、「疲れる」、「とても疲れる」が95%にものぼっています。そして、「仕事を辞めたいと思うことがある」という回答も6割に及んでいます。
学童保育は、97年の児童福祉法「改正」により、「放課後児童健全育成事業」として法制化されたものの、(1)国・自治体の責任が努力義務にとどまっている、(2)施設基準や職員配置の最低基準がない、(3)財政措置が定額の補助金で、しかも低額(2001年度で国は153万円)であるなど多くの問題点があります。その結果、東京など一部の自治体以外では、職員は殆どが非常勤・臨時・嘱託という不安定な身分であり、常勤職員でも極めて低い賃金水準です。
(5)いじめ、不登校、少年非行、児童虐待、家庭崩壊、情緒障害など子どもをめぐる深刻な問題を縮図のように反映するのが児童養護施設です。
児童養護施設が、これらの複雑な問題を背負った子どもたちの養育を担う以上、子どもたち一人一人の状況に即した処遇が必要であることは言うまでもありません。
しかし、職場の現実は、所定の労働時間内では管理的、画一的な養護しかできないという慢性的人手不足に苦悩しています。ちなみに、子供たちに寄り添った仕事をしようとすれば、自分の時間を投げ打って、無制限にけじめなしの「労働」をボランティア的にせざるを得ない状況です。
これらの問題に対し、福祉労働者が自らの生活と仕事を見据え、賃金や労働条件の改善、労働の質的向上とも結びつけた職員増、雇用の確保と安定等の要求を積極的に
掲げて職場からの運動を強化していくことは、「国民が主人公の福祉をめざす」上でも決定的に重要です。
(1)「小泉改革」は日本の福祉をどこに追いやるか
「小泉改革」の指針とされる「経済財政運営の基本方針」は、「聖域なき構造改革は、その過程で痛みを伴うこともある」が、「おそれず、ひるまず、とらわれず」に、「7つの改革プログラムをパッケージで進める」(骨太の方針)としています。
しかし、「高い人気」を博しているこの「小泉改革」の実態は、これまでの自民党がやりとおせなかった数々の国民生活犠牲の政策をトップスピードで強行しようというものに他なりません。それは、「改革」の第一に掲げる「不良債権の最終処理」をみても明白です。今日の不良債権といわれる物のほとんどは、まじめな中小業者が不況によって抱えている赤字を背景としたものであり、この処理を強行すれば20万から30万の中小企業が倒産し、新たに100万人以上の失業が生まれると推計されています。
また、「保険機能強化プログラム」として打ち出されている社会保障背番号の導入や個人レベルでの社会保障給付と負担を示すという「社会保障個人会計(仮称)」の構築も、まさに「自助自律」によって国民の社会保障利用を抑制しつつ、負担強化を図ろうというものに他なりません。
社会福祉制度についても、「民営化・規制改革プログラム」において、「医療・介護・福祉・教育など従来主として公的ないしは非営利の主体によって供給されてきた分野に競争原理を導入する」と言い切っています。そして、営利・非営利を問わず様々な主体による多様な福祉サービスの提供を図るために、「入口の規制ではなく事後の規制」へとシフトチェンジすべきだと主張しています。
しかも、「小泉改革」の中には、「国の責任」という言葉は一言も登場しません。つまりは、福祉サービスを必要とする国民が、営利企業を含む民間が提供するサービスを自分の責任で購入するという「商品売買」の形に社会福祉制度を根本的に変えてしまおうというものに他なりません。介護保険制度はもとより、一面の積極性を持つかに見える保育における「待機児童ゼロ作戦」にしても、公立・認可保育所の整備など公的責任によって待機の解消にあたるというものではなく、定員の弾力化や企業参入の促進で対応しようというものです。
「改革」のねらいは、何でしょうか。
97年の橋本内閣による「経済構造改革」では、新規産業のトップに医療・福祉関連をあげ、「2020年にはその市場規模は91兆円になる」と予測しました。また、99年5月に経済同友会は「子育て支援サービスに民活を導入するためには、競争環境の整備が必要である。まず保育所運営について民間企業への業務委託を解禁し、公立保育所の民営化(公設民営)を促進する。公立・認可保育所のみに多額の補助を与える運営費負担金制度を見直し、多様な子育て支援サービスについて幅広く補助を拡大する。最終的にはバウチャー方式(利用券による補助方式)導入により、施設への補助から利用者に対する補助へと転換を図る」という「改革の構図」を提言しました。
いままさに、これらの描いてきたプログラムにそって国民の福祉要求を企業の儲けのターゲットとすべく、福祉民営化・営利事業化の急速な「総仕上げ」が図られようとしているのです。公立保育所の民託や企業立保育所の参入促進を図る目的で、わずか4時間ほどの「審議」で強行された議員立法による児童福祉法「改正」も、新型特養ホーム利用者への「ホテルコスト」の導入もまさにその流れの一環であるといえます。
(2)企業参入と福祉の営利事業化、福祉労働の変質
介護保険制度の実施と社会福祉法の成立による実質的な措置制度廃止と支援費支給方式導入を背景に、「サービス供給基盤の整備」を名目に民間営利企業を中心とした「多様な事業主体」の参入がはかられています。
介護保険制度での在宅介護分野への営利企業参入はすでに大きく広がっていますが、施設サービスでもすでにケアハウスへの株式会社等の参入を認めています。
保育分野でも、東京の三鷹市が、公設保育所をベネッセコーポレーションに委託するなど、企業参入の解禁によるなし崩し的な保育制度再編がすすんでおり、6月までに全国で28ヶ所の民間企業立保育所が認可されています。しかも、厚生労働省は「思ったより少ない。もっと力を入れろ!」と自治体を督励していると伝えられています。
さらに東京都は、「企業の経営感覚の発揮により、多様化する保育ニーズに応えることのできる新しいスタイルの保育所」(東京都福祉局)だという「認証保育所制度」に踏み出しました。これは、企業への個別の委託どころか、利用は直接契約、保育料は原則自由という企業経営の保育所を公式に認め、補助金も出して大々的に育成し、従来の認可保育所制度にとって替えようというものに他なりません。そして、東京都は、この制度によって「東京から新しい保育に変えていく」と自己評価しています。
もう一つの大きな問題は、「企業参入」が、福祉サービスの供給主体の一つに営利企業が名乗りをあげるということにとどまらず、社会福祉法人自体の「営利事業体」化という体質転換としてもすすめられていることです。
総合法人や介護保険事業をおこなう法人に適用が義務付けられた「新会計基準」の導入は、その具体的な第一歩です。また、保育所に対して、特別保育事業を実施する場合には民間施設等給与改善費の全額を施設会計から本部会計に繰り入れることを認めるあらたな弾力化をおこなったこともその一つです。これらは、非営利の社会福祉法人の会計に、損益勘定を含む企業会計を持ち込むなど会計上からの利潤追求の形を作り上げるものに他なりません。
福祉サービス事業の費用の大部分が人件費である以上、会計上での「利益」を描こうとうすれば、経営と運営が総人件費の抑制と縮小にシフトされることは明白です。その具体的な表れが成績主義賃金や能力給の導入、職員の非常勤化、調理等の外部委託であり、労務管理の強化と福祉労働のマニュアル化です。それらは、社会福祉法人の営利企業化への移行段階の指標として現れるともいえます。
そして、企業や企業化した社会福祉法人による福祉サービスが、表面的な「利便性」の裏側に「儲けの物指」をひそませて、利用者を所得の多寡や支払能力で選別し、差別的に提供されるものになることが予測されます。
こうした福祉の営利事業化は、福祉労働にも重大な変質をもたらします。そこでは、利用者の生活を丸ごと相手にしながら、その人の人権や生存権、発達権を保障し、引き出すという福祉労働の本来の役割は切り捨てられ、コストや効率性のみが追求されることになります。それらが、福祉労働者から働きがいや意欲、労働の喜びと誇りを奪い、労働の衰退をもたらすことは自明ではないでしょうか。
そのような事態を許さないためにも、福祉の現場に広がる現実を、多くの福祉関係者、国民に伝え、共同して「国民の権利としての社会福祉」の再構築をめざす運動が強く求められています。
私たちは、第15回社会福祉研究交流集会にあたって「これでいいのか構造改革―現場から問う福祉のあり方―」という集会テーマを掲げました。すべての国民に激痛を伴って襲いかかる「小泉構造改革」が、私たちの仕事と生活に、そして、子ども・高齢者・障害者や低所得者、福祉サービスを求める多くの国民や労働者の生活と願いに、どんなに暗い影を落としているかを、現場の実態の中から一つひとつ明らかにしようというのが、このテーマに込められたねらいです。
今こそ、福祉の職場や地域に渦巻く矛盾や問題を浮き彫りにし、要求を対峙して解決の方向を探ることが求められています。そして、この課題に応えることができるのは、仕事を通じて日々、国民の福祉問題に向き合い、悩み、苦しんでいる私たち福祉労働者であり、それは同時に、「国民が主人公の福祉」の実現を願う福祉労働者の基本的な責任の一つでもあるのです。
第15回社研集会では、第一に、4つの分散会では、テーマ別に職場の実態や一人一人の要求を話合い、解決すべき課題やそのための力と運動について深め合いましょう。
第二に、4つの分科会と2つの分野別学習交流会では、「小泉構造改革」が福祉の職場と仕事に押し付けている激痛を描き出し、課題別・分野別に共通する問題と改善課題を確かめ合いましょう。
第三に、記念講演の中で、「人権と生存権保障労働としての福祉労働」についても学習し、その実現に向けた福祉労働者の役割と運動の方向を共有しあいましょう。
第四に、日本を「戦争する国」へと作り変えようとする重大な危機が広がる中で、何よりも平和を礎とした福祉の充実を実現するための国民と連帯・共同した行動の意義も確かめあいましょう。
そして、第五に、福祉労働者の要求を実現し、21世紀に夢と希望を広げるための最も具体的な力である労働組合を、職場で、地域で強く大きくする取り組みの重要性も話し合いましょう。
以上